死の組


 死の組とは、FIFAワールドカップやUEFA欧州選手権等で決勝トーナメントへの進出を賭けたグループ・ステージ(1次ラウンド)において、サッカー強豪国とみられる代表チームが同一の組に集中してエントリーされた状態を指す用語である。サッカーだけでなく様々な競技において、同様に強豪チーム・選手が同一の組に集中した状態を指すのに用いられる場合もある。死のグループともいう。英語では、Group of Death(グループ・オブ・デス)という。
 非公式のサッカー用語であるが、プレイヤーをはじめとするサッカー関係者・マスコミ・サポーター等に広く認識され、慣用句として世界各地の言葉で用いられている。強豪国の明確な基準があるわけではないが、世界各国ほぼ共通の認識で用いられている。

 「死の組」と初めて表現された発端は、1986年に開催されたワールドカップ・メキシコ大会からである。この大会のグループEは、西ドイツ・デンマーク・スコットランド・ウルグアイと実力の伯仲する強豪国が集中し、この時の心境をウルグアイ代表監督のオマール・ボラスがスペイン語でel grupo de la muerte(死の組)と表現したのが発端となり、各メディアで頻繁に用いられた事により、以降広く認識される用語となった。

 メキシコ大会で「死の組」という表現が用いられた背景には、当時のサッカー強豪国と言えば欧州サッカー連盟か南米サッカー連盟の加盟国を指し、それ以外のアジアサッカー連盟やアフリカサッカー連盟の加盟国は比較的に対戦しやすい相手であり、欧州や南米の強豪国は同一グループにこれら格下と見られる相手がエントリーされる事を望んでいたという点が挙げられる。

 メキシコ大会以降の大会で、アフリカ勢や北中米カリブ海サッカー連盟に加盟するメキシコやアメリカ合衆国等の代表チームが台頭し、現在ではこれら代表チームが同一グループに入った場合も「死の組」と表現されることがある。アジアサッカー連盟の加盟国は、以前より世界的な評価は高まってきてはいるものの、強豪国と見なされるまでには至っていない。日本でこの用語が使われだしたのは2002年のワールドカップ日韓大会からである。

 【死の組と呼ばれたグループ】
 特に1994年に開催されたアメリカ大会では、グループEの四カ国が勝ち点4で並び、得失点差も±0、最終的に総得点差で決勝トーナメント進出チームが決まるという大激戦となり、文字通りの過酷な組み合わせとなった。

○1990 FIFAワールドカップ
[グループF]
・イングランド
・エジプト
・アイルランド
・オランダ
 下馬評で草刈り場と見られていたエジプトが2試合連続でドローと善戦した事に加え、2年前の欧州選手権王者で優勝候補の一角のオランダが絶不調で、全チームが2試合を終えて得点、失点共に1と並ぶ展開となった。最終戦でイングランドがエジプトを1-0で振り切り、1-1でドローとなったオランダとアイルランドは抽選でアイルランドが2位、オランダは3位で決勝トーナメント進出となった。オランダは決勝トーナメント1回戦でグループD1位の西ドイツと戦う事となり、1-2で敗れて姿を消した。エジプトを除く3か国は2年前の欧州選手権のグループリーグでも同グループに入っていた因縁浅からぬグループだった。

○1994 FIFAワールドカップ
[グループB]
・ブラジル
・ロシア
・カメルーン
・スウェーデン
 ブラジルが予選で初めて敗北を喫して苦しんで最終戦でようやく出場を決めた事に加え、他3カ国がダークホース的存在だった事から激戦区になるのではと予想されていたが、ロシアはパヴェル・サディリン監督に反旗を翻したアンドレイ・カンチェルスキスやセルゲイ・キリアコフ等の多くの主力が出場をボイコットして戦力が大幅に低下、カメルーンも協会、首脳陣、選手が内輪もめを起こした状態でモチベーションが上がらずに自滅してグループリーグで姿を消した。ブラジルはダブルボランチと攻撃陣がフィットして6大会ぶり4回目の優勝、スウェーデンもユーロ92からの好調を持続し、3位となった。
[グループE]
・イタリア
・アイルランド
・メキシコ
・ノルウェー
 ニューヨークやオーランドといった東海岸が会場であり、対戦相手以上に蒸し暑さという殺人的な気象条件とも戦わなければならない過酷なグループとなった。上記の通り、最後は勝ち点、得失点差で4チームが並んだが、隣国で暑さへの対応に上回るメキシコが総得点の差で1位となった。

○1998 FIFAワールドカップ
[グループD]
・スペイン
・ナイジェリア
・パラグアイ
・ブルガリア
 無敵艦隊と呼ばれ、優勝候補の一角だったスペインだったが、初戦で2-3とナイジェリアに逆転負けを食らったのが響いてグループリーグ敗退。前回ベスト4のブルガリアと共に、欧州勢がこのグループで共倒れした。一方でアトランタ五輪優勝のナイジェリアが首位通過と貫禄を見せ、パラグアイも当時、名物GKであった守護神ホセ・ルイス・チラベルトが強豪相手に次々と好セーブを連発しグループリーグ突破と躍進。日本のファンからも記憶される存在となった。

○UEFA欧州選手権2000
[グループD]
・オランダ
・チェコ
・デンマーク
・フランス
 選手層で優位に立つオランダ、フランスに、中盤にタレントを擁して予選を全勝で勝ちあがってきた前回準優勝のチェコ、前々回優勝のデンマークという豪華な組み合わせとなったが、前評判でやや有利だったオランダとフランスが共に連勝してあっさりと決着した。チェコも試合内容では引けを取っていなかったが、決定的なシュートがポストやバーに嫌われたり、アンラッキーな判定でPKを献上される不運に泣いた。

○2002 FIFAワールドカップ
[グループA]
・フランス
・セネガル
・ウルグアイ
・デンマーク
[グループF]
・アルゼンチン
・ナイジェリア
・イングランド
・スウェーデン
 欧州、南米の優勝経験国2カ国に、爆発的な攻撃力が売りのアフリカ勢、堅実さをイメージさせる北欧勢と両グループ共に似たような構図の死の組といわれたが、それでもビッグクラブで活躍する選手を多く抱え、前回優勝国で今大会優勝候補筆頭の王者フランスと共に優勝候補の一角といわれたアルゼンチンのグループリーグ突破は少なくとも固いと見られていた。しかし、フランスはジダンの故障欠場に泣き、アルゼンチンもベロンの絶不調と相手の守備的な戦術に手を焼き、共にグループリーグ敗退という稀にみる大波乱となった。グループAではセネガルが旋風を巻き起こした。開幕戦でフランスを破ったのは勿論だが、デンマーク戦で自陣カウンターからサリフ・ディアオのゴールまでの一連の流れは、持ち前の身体能力に組織プレーが加わったブラックアフリカ勢の進化を印象付けた。両グループ共に1位は北欧勢だった。梅雨を配慮していつもの大会よりも早めの開催日程でクラブシーンからの休養が少なかった事が、ビッグクラブでの激闘に疲弊した選手を多く抱えたフランス、アルゼンチンに不利に働いていた。

○UEFA欧州選手権2004
[グループD]
・チェコ
・ラトビア
・ドイツ
・オランダ
 実力で落ちるラトビア相手に、唯一ドローと勝ち点を落としたドイツがグループリーグ敗退となった。チェコは初戦のラトビア戦、続くオランダ戦ともにリードされるという苦しい展開ながら、カレル・ブリュックナー監督の流れを変える采配が当たり逆転勝ちし、ドイツ戦は主力温存のまま戦って3連勝でグループリーグ突破し、強みの中盤を軸とした攻撃陣が絶好調で優勝の声も高かったが、準決勝で伏兵ギリシャに延長前半のシルバーゴールで敗れた。

○アテネオリンピック (2004年)
[グループB]
・パラグアイ
・イタリア
・ガーナ
・日本
 欧州地区予選を兼ねたU21欧州選手権優勝で前回ベスト8のイタリア、南米地区予選でサッカー王国ブラジルを退けて出場権を得たパラグアイ、前々年のアジア競技大会準優勝で前回ベスト8の日本、アフリカの雄ガーナがこのグループに集まった。パラグアイは初戦で日本に勝ち、ガーナに負けたが、最終戦でイタリアに勝ち、1位でこのグループを通過した。イタリアは初戦でガーナに引き分け、日本に勝ち、パラグアイに負けたが得失点の差で2位となりこのグループを通過した。ガーナは初戦でイタリアに引き分け、パラグアイに勝ち、最終戦日本に引き分け以上でグループ予選突破であったが、敗戦しグループリーグ3位となった。日本はパラグアイ、イタリアを相手に2連敗しグループ予選敗退及びリーグ最下位が確定したが、最終戦ガーナに勝ちなんとか面目を保った。迎えた決勝トーナメントはグループCを三連勝し、決勝トーナメントでも圧倒的強さを際立たせたアルゼンチンが金メダルを獲得したが、銀メダルにパラグアイ、銅メダルにイタリアとこのグループの代表チームが入り改めてグループBのレベルの高さが再認識された。

○2006 FIFAワールドカップ
[グループC]
・アルゼンチン
・オランダ
・コートジボワール
・セルビア・モンテネグロ
 アルゼンチンとオランダの前評判の高さは勿論だったが、初出場ながらもディディエ・ドログバを軸とした攻撃力が売りのアフリカの強豪コートジボワールに加え、奔放な攻撃が売りだった旧ユーゴ時代とは打って変わって予選10試合で失点1の守備力を看板としたセルビア・モンテネグロの存在はかなり不気味だった。しかしアルゼンチンとオランダが順当に連勝してあっさり決着した。一方でコートジボワールのドログバもアルゼンチン戦で同点ゴールを決めるなど期待通りの活躍を見せたが、なかでも堅守を誇るセルビア・モンテネグロの守備陣から6ゴールを奪って圧勝したアルゼンチンの強さが鮮烈に映り、当時10代で初々しさを残すリオネル・メッシも後半途中出場して1点を決めるなどし、後年の活躍を予感させる試合となった。だが、決勝トーナメントでは急激に勢いが失速し準々決勝で姿を消す。
[グループE]
・イタリア
・チェコ
・ガーナ
・アメリカ合衆国
 前評判で一枚上のイタリアとチェコが共に初戦に勝利し、順当な結果になると思われたがその初戦でヤン・コラーを負傷で失ったチェコが尻すぼみで続く2戦を連敗。入れ替わってグループリーグで旋風を起し連勝したガーナがイタリアと共にグループリーグを突破した。

○UEFA欧州選手権2008
[グループC]
・イタリア
・オランダ
・フランス
・ルーマニア
 強豪3カ国に加え、予選でオランダに1勝1分けと伝統的に大物食いが多いルーマニアが加わった死のグループとなったが、イタリアとフランスに3点差をつけて圧勝したオランダが最終戦もルーマニアとの雪辱戦を制し、全勝でグループリーグ突破の一人舞台となった。逆にフランスはルーマニア戦での引き分けのみの勝ち点1に終わった。

○2010 FIFAワールドカップ
[グループG]
・ブラジル
・ポルトガル
・コートジボアール
・北朝鮮
 ブラジルとポルトガルの前評判の高い国にアフリカでも実力のあるコートジボワールと強豪が揃ったため。


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