扇風機をつけたまま寝ると死ぬ?



 密閉された空間で扇風機をつけたまま眠ると窒息や低体温症などで死亡するという話が存在する。韓国では広く信じられており、日本でも古くから「扇風機をつけたまま寝ると死ぬ」という類似した話がある。

 扇風機に当たったまま寝てしまうとおなかを冷やして体調を崩したり、局所に長時間風圧のストレスを受けて気分が悪くなる事がある。夏場にエアコンなどをつけたまま就寝して風邪を引いてしまうことなどもしばしば起こるが、「扇風機をつけたまま寝ると死ぬ」はこれらの現象を極度に強調したか、あるいは原因や因果関係に関する科学的な無理解により発生したものと考えられる。

 日本でも以前から扇風機による「低体温症による死亡説」または「脱水症状から塞栓症を起こして死亡する説」などが一部で信じられており、話題にのぼることがある。また1970年代から1980年代には「扇風機による死亡」が新聞報道されたことがある。元プロ野球選手の吉沢岳男は扇風機の電源の切り忘れによる脳出血で38歳の誕生日に死亡している。

 韓国では、就寝中の扇風機による死亡事故が報じられることがある。一方で、それらの事故報道はデマであるとする見解が、韓国のニュースサイトJoonAng Dailyに掲載されている。記事の内容は、扇風機死亡事故は韓国固有の都市伝説であると断定するものである。韓国の医療関係者のコメントとして、扇風機死亡事故とされるものの主要な死因は心臓疾患やアルコール依存であると書かれている。扇風機による体温の低下は死亡事故の要因の一部であっても主要因ではないとされる。

 扇風機による死亡説の支持理由として、「汗をかき、扇風機の風によって盛んに蒸発が起きることで体温が奪われ低体温症に至るまたは体内の水分を奪われるため脱水症状に陥り血液がドロドロになって脳梗塞や心筋梗塞を起こす」というものがあげられている。また実例として韓国の新聞記事を引用するものがある。

 一見すると科学的・論理的な説明であるが、実際には通風や空調が人体にもたらす影響についての医学面からの研究例は少なく体表温にわずかな低下をもたらすことや、風の強さが快適感に影響をあたえるといった程度のことしか分かっていない。上記の説明については、たとえば次のような誤り・誤解が含まれている可能性がある。

 低体温症については、まず汗に関する誤りが指摘される。「発汗は、人体が暑いと感じるから行われる」のであり、もし少しでも寒いと感じたら汗をかくどころか「毛穴をしっかり閉じて熱を奪われまいとする」いわゆる鳥肌状態になる。また風邪をひくほどの寒さを感じたら目が覚めて眠るどころではなくなる。一方で急性アルコール中毒や睡眠薬の服用などにより泥酔、昏睡状態にある場合、覚醒に至らないまま体温低下を起こす可能性がある。

 もうひとつは「気化熱によって際限なく温度が低下する」という誤解であり、風をあてようがあてまいが体表面温度が「露点温度」より下がることは絶対にない。扇風機に当たって寝ていると凍死してしまう、などという状況が通常の室温下では発生しないのはこのためである。露点温度は相対湿度によって変化し、湿度が低いほど露点温度は低くなる。気温が同じであっても湿度が低いと過ごし易く感じるのは、この理由による。湿度が100パーセントになったら気化は起こらないため、気温も露点温度も同じになる。気温が25〜35度に対し、湿度70〜90パーセントでは露点温度は気温より6〜2度低い程度である。脱水症状であるが、「暑さを感じても扇風機を使わず盛んに発汗をする」方が、「扇風機を使って発汗を少なめに抑える」ことに比べて有利という根拠はなく、むしろ不利と考えられるが、いずれにしても、熱中症の予防の観点からもこまめに水分補給することが重要である。

 もともと過労状態であったり、老齢・病弱などの身体的な素因があったうえで、長時間扇風機やエアコンの風を受ける事で体温調節がうまく機能せず、結果として心臓麻痺などの症状がおこる可能性がある。この場合因果関係の従属性として「扇風機をつけたまま寝ると死ぬ」確率があるが、全称命題として「すべてのヒトは扇風機をつけたまま寝ると死ぬ」とするのは早まった一般化による誤謬である。


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