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CLAPE-ぶかぶかとぬくもり-



生徒会室で仕事に勤しむ美咲のもとにいつもの如くやって来た碓氷。
美咲もすでに諦めたらしく顔すらもあげずにそのまま仕事を続行しているのだった。

そんな碓氷が眉間にシワを寄せてドアを閉める。



「…会長」

「なんだよ、碓氷」

ようやく美咲は顔を上げたのだが、碓氷の眉間に刻まれたシワはとれないまま…。


「…何でそんなことしてるの?」

「何でって仕事だからに決まってるだろ?」

「違うよ、何で鳥肌立ててまでそんなことしてるのっていってるの」


彼が眉間にシワを寄せたのは彼女が自分の方を見ないからではなく、風邪をひきそうなくらい薄着の美咲の姿にだったのだ…多分。


「別に鳥肌なんてたててない」

「へぇ、じゃあこの会長の腕にぽつぽつ浮かんで見えるものは俺が幻見てるからなのかな?」

「そうだな、宇宙人だからな」

くいっと持ち上げた彼女の腕には明らかにぽつぽつと鳥肌がたっている。

「どうして幻に感触まであるのかな?」

するっと撫で上げるとびくんと体を弾ませて腕を勢いよく引いてしまった。

「うるさい、セクハラ宇宙人」

「だいぶ冷え込んで来たって言うのに…上着どうしたの?」

すでに秋、衣替えも終わって上着もこの時間なら必須なほどの温度だ。


「…家に忘れた」

「うそ」

「何でだよ!?」

「朝着てるの見たから、ホントはどうしたの?」

うそはもう吐けないと観念したように小さな声で美咲が答える。


「…クラスの子に貸した」

「はぁ…優しいのはいいことだけど、俺は美咲に風邪なんかひいて欲しくないんだよね」

彼女の苦手なちょっと切なげ表情で苦笑う。

「…」

「はい」

腕を抱くようにしていた美咲に碓氷は自分の上着を差し出した。

「えっ…お前はいいのか?」


その問いに碓氷が微笑んで美咲の肩にその上着をかけてやる。
ぶかぶかだが防寒具としてなら十分役割は果たせるだろう。
それに…

「うん、後で温めてもらうから」

さらりと言われた言葉に美咲は言葉が出ないらしい…。

「…」

しばらく固まっていた美咲に碓氷がつんっと額をつついてからかうように笑う。

「ほら、仕事するんでしょ?会長様」

「あっ…おう、ありがとな碓氷」

「どういたしまして」



そしていつもの位置で彼女が仕事を終えるのを待つ。



このあとの帰り道、いつもと違うのは美咲が碓氷の大きな上着を羽織っているということと指先が冷たくなるからといって彼女から差し出された手のひら…。


美咲を送る途中で碓氷が宣言通り彼女を抱きしめていたのは言うまでもない。


小さく香った秋の匂いと服についた彼女の匂い。

高くなった月が空に登り、2人のひとつになった影は静かに静かに長くのびていった…。



END

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