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美咲と碓氷が早数ヶ月、やっと想いが通じ合って恋人同士になったものの、相変わらず多忙な毎日を送る美咲。
遠出をすることもほとんどなく、デートの場所は専ら碓氷の部屋となっていたある日のこと…。



「美咲ちゃん」
碓氷がソファーに座って本を読んでいる美咲の横から声をかける。

「ん〜?」
いつもの少し気が張った様子ではなくやわらかい声で美咲も応じる。


「デートしよ」

「はっ!?」
一瞬目が点になったかと思うとバサッと本を落下させて驚いた。

「何驚いてんの?」

「いや、唐突過ぎだろ」

真っ赤になり、慌てて落とした本を広い上げながらもごもごと応える。

「そんなことないよ、だって付き合ってるんだし」

沈黙しつつどう答えたものかとぐるぐると考えているらしく、最後には頭を抱えて項垂れた。

「…で、ダメ?デートしたいんだけど」

彼女の弱い耳の辺りに囁きかけると敏感に跳ね上がり、ソファーの端に避難し始めた。

「な、近いっての!!」

ずりずりと警戒しつつ、臨戦態勢に入った真っ赤な美咲を得意な意地悪気な笑顔でジリジリと端に追い詰めて覆い被さる。

「近づいたっていいでしょ?美咲は俺の彼女なんだもん」

「彼女いうな!」

「じゃあ恋人?」

「それもやだ…」

―面白くないな…。

「…なんで?」

「…恥ずかしいから」

「俺が彼氏じゃ恥ずかしい?」

離れながら身を起こし、苦笑い気味に美咲を見ると慌てて彼女も身を起こして手をわたわたと振った。

「ちがっ、そうじゃなくて…」

「じゃあ何?」

「慣れて、ないから…そういうの」

申し訳なさそうに小さくなってうつ向いた彼女が可愛くて、ちょっと意地悪しすぎたかなと反省しながら美咲の髪をくしゃりと撫でた。

「じゃあ慣れよ?」

「うっ…」

「今度の日曜日、美咲の家迎えに行くから。時間は8:30ね?」

「…わかった」

ほっとしたのか顔を上げて弱々しげに微笑んだ美咲を再び押し倒す。
彼女はというと、なんだと理解できない表情で口をパクパクさせている。

「じゃ決まり、あとは仲直りだね」

「こっ、こらー!!」




…そのままちょっと意地悪な碓氷の毒牙にかかって甘い甘い時間を過ごすのはいつものこと。
だが、それに慣れるはずのない美咲はその日いささかぶすくれながら家に帰って行ったらしい…。

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