NOVEL
嘘?ホント?
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思い詰めた顔を作って私は碓氷のもとを訪れた。

「美咲、どうしたの?」
部屋のソファーに座って聞かれる。

「碓氷ごめん…」
演技で下を向きながらぼそっと謝ってみる。

「何が?」

「その、キス…された」

「…誰に」
一気にその場の、碓氷から発せられた空気が冷える。

「…深谷」
ただでさえあまり快く思っていない深谷に…
公言してないとはいえ、愛しい彼女が手を出されたとなれば碓氷がキレないわけがない…。

(…怒ってくれるだろうか?)

「…嘘だよね?」
とりあえず、確認してくる碓氷の声は明らかに怒っている。

(成功だな!)

「嘘だよ」
さっきの思い詰めた様子から一転私はにっこりと笑ってみせる。


「どういうことかな?」
目を見開いて驚いている碓氷に種を明かした。

「エイプリルフールだろ?今日」

「…引っかかたってわけか」
若干…いや、だいぶ悔しいらしい。

「ねぇ美咲、俺たち別れる?」
突然向けられた冷たい目…、そんな視線を向けられるとは思わなかった。

「え…」
(あんな嘘をついたから愛想を尽かされたのか…?)

私が放心して何も言えずにいると碓氷が横で思い切り吹き出した。

「嘘だよ、美咲ちゃん」
いつも私を見てくれる時のやさしい視線。
ようやく、私も引っかかったことに気づく。

「お前〜!」

「仕掛けてきたのは美咲ちゃんでしょ〜」

「それは反則だろ!?」

「美咲ちゃんも反則したじゃん」

「は?」

「俺以外のやつにキスされたなんて、嘘でも許さないよ?」

(……怖い)

「でも、お前も別れるなんて言ったんだから…」
本当に寂しかった。言われた瞬間に背筋が凍ってしまった気がする。

「…嫌だった?」
覗き込むように私を見つめる碓氷を睨んで怒鳴る。

「い、嫌に決まってるだろ!?」

「その言葉に免じて今日は許してあげましょ」
なんだか嬉しそうな碓氷にますます腹が立つ。

「私は許してないからな!」

「そうだね…確かに反則だったかも、ごめん」

ふわりと後ろから抱きしめられて強ばった心がとかされる。

「…」

「どうしたら許してくれる?」

「今から聞くことに正直に答えてくれ」

「うん、わかった」

「別れるって本気で思ってないか」
まだ少し不安が消せない…。やっぱり嘘でもショックは大きかったのだ。

「ないない、あり得ないよ。俺が欲しいのは美咲だけだから」
即答されて不安がかき消されてゆく。

「私のことどう思ってる?」

「一言で言い表せませ〜ん」
微笑んだ碓氷につられて私も笑ってしまう。

「じゃあ、簡潔に」

「ん〜簡潔に言うと、…」

「っ…!?///」
耳元でいつもより少し低い、甘い声で囁かれ、心臓が跳ねた。


「もっと欲しい?それならたくさん言ってあげるよ?」
少し意地悪な顔で笑う碓氷を止める。


(…心臓もたないから!)

「い、や…もういい。十分だ」

「そう?じゃあ、やりますか!」

「何を?」

「仲直り、だよ」
言うが早いか押し倒されるのが早いか、結局その後は碓氷のいいようにされてしまった…。


******
甘い甘い2人の時間で最後に約束されてたのは…


お互いが悲しくならないための誓い。




…私がキスされたいのは碓氷だけだから、
......言ってはやらないけど。


ソファーで眠っているすぐとなりの彼に笑いかけ、ゆっくりと私も後を追う。

温かい腕に包まれて…。






…でも、他の人にされちゃったら正直に言いましょう!


END
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