NOVEL
夜を越えて
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彼の家に泊まった翌朝…、肌に何かが触れ続けているのに気づいた。
うっすらと目を開くと目の前にまだ眠ったままの碓氷が美咲を包み込むようにしていた。


「っ!!」

彼の寝顔が一番に目に入った美咲は毎回驚きつつも、その端正な顔立ちに数えられないくらい目を奪われてきた。
今回も例に漏れず、だ。


ふと触れたくなってそっと彼の顔に触れてみるとその目が開いた。

「美咲…?」

「あっ、…ごめん」

せっかく眠っていた彼を起こしてしまった罪悪感で手を引っ込めたがするっと掬われるように彼の手に捕らえられた。

「何も悪いことしてないでしょ?」

「起こしちゃっただろ?」

「美咲が触ってくれたのわかったからだよ。それよりさ…」

「…!?」

「もっと触ってよ」

先ほどしていた彼の頬に触れるという行為が相手に促されるととんでもなく恥ずかしい…。


「な、なんだよ…」

「美咲から触ってくれるの珍しいからね」

「そうだったか?」

「シてるときは一生懸命しがみついてくれてるけどね。普段はあんまり触ってきてくれないでしょ?」

「…変態」

「変態、か。まぁいいよ、美咲に触れていいなら変態で」

「どういう理屈だよ」

「俺は美咲にしか触りたくないんだもん、だから変態で構わない」

「…お前っ」

「いいでしょ?恋人の前でなら」

すりっと頬を寄せて一瞬その目を伏せた。

「やっぱりお前は宇宙人だな」

「そうかな?ねぇ、美咲」

「なんだよ」
離された手を引っ込めつつ、ぶすくれながら返事をする。

「触ってよ、さっきみたいに」

「えっ」

「美咲は俺に触りたくない?」

「…い、ゃその…」

首を静かに横にふる。
そしてそろそろと彼の頬に触れた。

「…くすぐったいね」

「イヤか?」

「ううん、気持ちいいね」

「そうか…」

「俺はこっちも好きだけど」


くいっと体を引き寄せられてその広い胸と長い腕に閉じ込められた。

「お、おい」

「気持ちいい…」

「は!?」

「美咲の肌ってなんか安心するから…もう少しこうさせて?」

「…」
小さく頷いて、碓氷の胸に顔を埋めた。
すると美咲を抱き直した碓氷が彼女の髪に擦りよるように顔を寄せてゆっくりと規則正しい呼吸をし始めた…。




まどろみのなかでかおるはお互いの温かな香り。
外は宝石のような光が注ぎ始めた夜明け。

手を引かれてお互いに歩み始めた時間はこれからも夜を越えて幾度となく命へ届く…。


1人では不可能でも、2人なら…。



END
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