FUTURE
両親の歌声
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虹の彼方にむかし
子守唄で聞いた国がある

虹の彼方の空は夢見たことは本当になる

いつの日か私は遠い国へ行くよ
苦しいことも悲しいこともない国へ行く

虹の彼方の空は
鳥が歌うよさぁ行きましょう




「…Over The Rainbow?」
ソファーに座って薫をあやしていると拓海が覆いかぶさるようにして立っていた。

「拓海、あぁ懐かしいか?」

「うん、久しぶりに聞いたかな」
高校の音楽の授業で習って以来だからそれもそのはず、私もふと思い出して歌ってみたのだ。


「お前英語のも歌えるか?」

「多分…、歌って欲しい?」

「あぁ、聞きたい」

「じゃあママのリクエストに応えまして…」
すうっと息を吸って歌い始めた。






Some where over the rainbow way up high,

There's a land that I heard of once in a lullaby,

Some where over the rainbow skies are blue,

And the dreams that you dare to dream really do come true.


Someday I'll wish upon a star and wake up where the clouds are far behind me,

Where troubles melt like lemon drops,away,above the chimney tops that's where you'll find me.


Some where over the rainbow blue birds fly,

Birds fly over the rainbow,why then,oh why can't I?




「お前、歌上手いよな…」
思わず口に出して褒めてしまうくらいにうまい。
ホントにこいつは何をやらせても…。

「そうかな?でも俺は美咲の歌声すごく好きだよ?」

「…ありがと」
とりあえず言うと満足そうな顔で笑っている。

「薫はご機嫌だね〜、ママに抱っこしてもらってるからかな?」

ご機嫌な薫というと私の腕の中でニコニコと笑いながら、手をパタパタさせている。…確かにご機嫌のようだ。

「拓海も抱っこするか?」
薫を軽く持ち上げ抱き直しながら聞いてみる。


「うん、する」
あまりに即答で思わず笑ってしまいそうになる。

「お前が抱っこしてるとやたら笑うよな」
さっきのパタパタがさらに大きくなって拓海の顔に向かって手を伸ばしている。

「美咲ちゃんが抱っこしてるときは笑ってるか安心してぐっすり眠ってるよね」

一生懸命伸ばしたパタパタに大きな掌で対応しながらこっちを向いて微笑んでいる。

「そうか?」

「うん、ママはやっぱり安心できるんじゃない?そういえば、薫の寝顔は美咲ちゃんそっくりだよ?可愛い顔して寝てるもん」


「…そんなに似てるか?」

「うん、この前美咲と薫が一緒にお昼寝してるとこ見てびっくりしちゃったよ」

「…じゃあ男の子だったら拓海に似たのかな?」

「みたい?」
ふと思った疑問を口にして少々後悔した。
明らかに拓海の何かに火をつけた。


「…もう少し経ったらな」

「じゃあ薫はお姉ちゃんになるね」
ニヤニヤと意地の悪い顔をして笑っている。

「こら、まだ先の話しだろ!?」

「え〜、でも美咲には頑張ってもらわないと…俺も頑張っちゃうけど」

薫を片手に抱き、もう片方の手で私の肩を抱き寄せる。

「今から頑張るな!!」

「予行練習は必要でしょ?」

「ただしたいだけのくせに!そういうのは薫がもうちょっと…んっ」

いきなり唇で口を塞がれた。
この変態フェロモン星人は子供がいようがいまいが変わらないらしい…。


「うん、したいよ?」


妊娠していてもしようと思えばできた行為だが彼はあえてしなかった。


薫がお腹にいるとわかってからは、出産や育児、妊娠に関する本も相当読んでいたし、もともと家事もしてくれていたから、(若干過保護な気もしたが…)今までよりも負担がかからないようにしてくれていた。



なぜしないのか聞きはしなかったが、行為自体が私の負担になることを考慮してくれていたのだと思う。



だが…、

「〜っ!」
まさかここまで直球でくると思わなかった。

「くれないの?」

「今はダメだ、…せめて夜になってから」


結局抵抗などムダ…その瞳を一度目にしたら逃れることはできないとわかっている。


「久しぶりだから、いっぱい構ってね?」

「さぁな」

「ひどいなぁ、結構美咲に触れるの我慢してたんだよ?付き合う前以来の頑張りっぷり」

口を尖らせて薫を抱き直しながら主張している。


「そのくせやたらとキ、ス…してきたじゃないか」


「だって〜、代わりに出来るのそれくらいじゃん」

「お前、あんだけひっつきまくってただろうが!」

それこそ暇さえあればいつもだった。

「それは薫の声聞くため」

いくら言っても変わらないな…。

「ほんと口が減らない…」

「ねぇ美咲、もう一回歌わない?」

「あ、あぁ。どっちだ?」
唐突に話が変わって少々驚いた。

「じゃあ英語いける?」

「多分…」




ゆっくりと歌い始めた両親の間で静かに耳をかたむけつつ微睡む娘。



心地よい歌声のパパとやさしい歌声のママ。

2人の歌声が室内に響き、私の心を揺らす。


きっと大きくなって頭では忘れてしまっても、心は忘れないから…。



まだまだ知らないたくさんのことをこれから2人に教えて欲しいです。


生まれたばかりの私だけど、いっぱい2人のことを見てるから…。


手を伸ばせば触れられるほどの距離でパパとママが笑ってくれてる。


いつだったか、パパとママが言ってたこと。


私は幸せになれるって、


だけど、もう幸せだよ?


だってこんなに2人が仲良しで、やさしく私に触れてくれるんだから…。


END
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