FUTURE
あなたから私たちに、私からあなたたちへの贈り物
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私が薫を生んでから数ヶ月経ったある朝。
私はベッドの側にあるベビーベッドを覗きこもうとした。
娘が生まれてからまずそうすることが日課となっているのだが、…体が動かない?

「む、重…っい?」
良く見ると隣の拓海がぎゅぅっと私を抱きしめていたのだ。
毎度のことだが、ついつい呆れて辛うじて使える左手で彼の背中を叩いて起こす。

「拓海っ、私を潰すなよ!!」

「…離したくない〜。もっと寝てようよ…」

「ご飯あげなきゃいけないんだから、離れてくれ…薫が泣くぞ」


薫が生まれてからの必殺技になったこの言葉。
拓海も愛娘を泣かすことはしたくないようで渋々ながら離れてくれる。


「それはヤだ…、泣くのが仕事でも泣かせるのは嫌だね」
このとおり、効果覿面だ。

「だったら離れろ」

「わかった〜」
するりと腕を抜いて体を解放される。
ぐっと伸びをして、すぐさまこの時間には既に目を覚ましている薫のベビーベッドに顔を覗かせた。


「薫〜?おはよう。ごめんな、起きてた、ろ…」

ぐずると思ったのに手足をバタつかせて笑っている。


いつも思うがなんでこんなに…
「泣かないんだろうね?」

「うわっ、いたのかよ!?」
気づくと真横に拓海の顔があって驚いた。

「そりゃ、奥さん見たら次に娘見たくなるでしょ。…でもホント泣かないよね?」

「あぁ、不思議なくらい泣かないな…。オムツくらいじゃないか?泣くの…」

「そうかもね、薫おはよー」

「おいで、薫」
薫を抱き上げるとニコニコしながらちっちゃい手で私の胸元に手をやって服をきゅっと掴んでくる。


「いいこだね、よく笑うし」
ほっぺたをつついて微笑む拓海が私に顔を向けていう。
その姿を見ているとこちらもつられて微笑んでしまう。


「あぁ、寝つきもいいしな。もっと泣くと思ってた…、って拓海は向こうに行っててくれ、ご飯あげるって言っただろ」


「はいはい、薫ちゃん恥ずかしがりなママにたくさんご飯もらってね?」


一度肩を竦めてひらひらと手を振りながら部屋を出ていく拓海。
戸がきちんと閉まったのを見届けてから着替えを出し、ぷちんっぷちんっとパジャマのボタンを外す。


…粉ミルクではなくちゃんと母乳で育てたほうが子供に良いということなので薫にはいつも母乳を与えている。
だが、拓海の前であげるのにはやはり抵抗があるのでいつも他の家事をしてもらっているのだ。



ちょうど薫が飲みおえて、ボタンを留めて着替えをすませたところに部屋の戸がコンコンとノックされ、キィっと小さく音をたてて、拓海が入ってきた。

「ご飯できたよ。薫は済んだ?」

「おう、終わったぞ」
片手で抱えていた娘を軽く揺すってみせる。


「そっか。薫、おいで」
ぽふっと隣に腰をおろした拓海がその大きな手を薫の背に当てた。

「薫、パパだぞ。抱っこしてもらえ」
明らかに目線が上の拓海を目一杯仰いでその小さな手を伸ばして話しかけるように声をあげている。

「ずいぶん元気だね、遊びたいのかな?」
抱き上げた薫に高い高いしながら、幸せそうに微笑んでいる。


「かもな。でもお前はこれから仕事だろ、遅れるしご飯冷めちゃうぞ?食べよう」

「うん、薫はリビングのベッドに寝かせておけば平気かな?」
高い高いを終えて、ぽんぽんと背中を叩いている。
一応移動させられるベビーベッドもおいてある。
私が家事をしている際に近くで寝かせていられるからだ。
だけど…

「そうだな、…ソファーのとこで食べないか?側にいてやりたいし」

「賛成」
少しでも目線を合わせて近くにいてやりたいとどうしても思ってしまう。

拓海もそれをわかっているのか、表情はいつもの意地悪っぽい笑顔ではなく、穏やかで柔らかな笑みだった…。

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