●Eine Mitteilung für dich 2-11/2ﾍﾟｰｼﾞ目
ゆっくりと、しかし着実に…。
違うっ、僕は寒くなんてないっ。
しかし違うと否定しながらも、否定しきれない自身を感じてしまってもいた。
それが何でかは分からないけれど…。
だから僕は手を伸ばした。
僅かな冷たさなんて掻き消してくれる温かな光。
その温もりを手放したくなくて僕は必死にしがみ付く。
そうすると、逆に強い力で僕は温かさに包まれた。
冷たさは掻き消え、痛い程に食い込む熱さに体が甘く震える。
力が強くなる程に感じる安堵感に、目頭に込み上げてくるもの…。
温もり、そして香り…。
何よりも安堵する、胸を焦がす愛おしい匂い…。
「…ぶや」
何だってこんな気持ちになるのか…。
理由が分からないからこそ余計に拭いきれない。
でも、でもだ。きみがいれば…、僕は大丈夫。
心を強く持てる、見失わずに済む。
もっと強く抱かれても平気なぐらいだ。
きみになら、例え抱きつぶされたって構わないから…。
「村田ぁ～…むにゅむにゅっ」
「…？」
僕はうっすらと目を開く。すぐ目の前には誰よりも愛しい存在の顔があった。
「………渋谷、寝てる？」
体を包む温もり。
どうやら…渋谷が僕を抱き締めてるような体勢で僕達は寝ていたようだ。
僕は昨日の事を思い出す。
「…っっ」
昨日の事を思い出すと、かぁ…っと頬が熱くなってしまう。
昨日は僕も実はあんま余裕がなかったんだ。
何故だか理由の分からない不安感によって。
随分とな行動を取ってしまっていたと思う…。
しかし目が覚めた今では、昨日のような不安はまったくといっていい程なくなっていた。
…渋谷が力強く抱きしめてくれたから。
刻み付けてくれたから？
「……」
僕は夢を…見ていた。まだドイツに来る前の、眞魔国で今回の旅行の件を報告していた時の…。
しかし今は、あの時感じた僅かなものすら感じずにあの時の事を思い出す事が出来た。
昨日の色々に照れつつも思う。
やっぱり渋谷は凄い…。
きみにかかれば小さな不安なんて掻き消えてしまう。
明確な理由も分からないものなのに。力が出てくる、大丈夫だって思えてしまうのだから…。
照れくさく思いつつも僕は、今は寝ている渋谷に微笑みかける。
「ん？」
ふと渋谷の格好が気になった。僕はパジャマを着ている…。
ボタンかけが適当でかかってないところもあるのは渋谷がやったのかな？
でもとりあえず僕はパジャマ姿だ。
「…」
昨日の事を考えそうになり僕はふるふると頭を振る。
違う違うそういうことじゃあなくってだな。
問題は渋谷の格好だ。
渋谷は、パジャマではなくちゃんとした普段着姿だった。
抱き締められているから分かる、渋谷からは汗のにおいがした…。
要するに、シャワーを浴びた後のシャンプーの香りではないということだ。
まるで先に起きて準備運動か何かでもしてきたような感じの…。
「渋谷…」
「んん～」
そっと囁くと、渋谷が薄く目を開いた。
「……はよ」
半分眠っているようなぼーっとしている渋谷。そんな顔も、とても愛おしく思った…。
「…おはよ」
くすりと微笑む。
「もう服、着てるんだ？」
「ん～…あっ！」
むにゃむにゃしてた渋谷だが、一気に目を見開く。
「あっ、今何時だ!?」
と渋谷は自分のＧショックに手を伸ばす。
「あちゃー、やっぱもう結構いい時間だぞ？」
「ええ…！？」
時計を確認するけど、確かにもう結構な時間だ。
昨夜何時頃に寝たかは時計とか見てた訳じゃないし分からないけど、でも、確か部屋についたのは夕方の頃だった筈…。
寝過ぎだろう僕…。
「あ(゛)―…うん。仕方ないよな。昨日はその…寝るの遅かったし、色々と疲れもしたし」
照れたように頬を掻く渋谷。
「……」
遅かったんだ…。つられて僕の方まで照れてしまう。
旅の初日は環境が変わったせい等もあり疲れも来たりもするもの。
しかし、今渋谷が言ってるのは明らかに違う意味のことも含まれているような気がしてならない。
鼓動が速くなる…。
本当、僕の気持ちの制御は渋谷の前では意味をなさないらしい。
他だったらもっと上手く取り繕えそうな事も、渋谷相手だったらそうは出来ない。
きみは、特別な相手だ…。
こんな風に、胸を締め付けられるようなドキドキする気持ち。
そして泣きたくなるような愛おしさも、甘さも、全部全部渋谷を好きになってから知ったもの、彼が教えてくれたもの…。
嬉しいけど恥ずかしくて仕方がない事はつい隠したくなる気持ちもあるけど、渋谷も素直に気持ちを出すのを喜んでくれるものだから…、頭の中でぐるぐる悩んだ末結局はそのまま素直な感情を吐露し続ける事を選択してしまうんだ。
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