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自分で稼いだお金で僕と海外旅行をしたいと言ってくれた渋谷。
僕の昔言った事を憶えてくれていた…。とても嬉しかった。
とても、幸せな気持ちになった…。
だからこそ僕は、この旅行を渋谷と笑顔で帰ってこれるような旅にしたいんだ。
お土産の話をしている渋谷達。
どんなものがいいのか頭を悩ませるフォンビーレフェルト卿。
可愛い細工のアクセサリーなどをご希望のグレタに、自分がご希望に沿うものを選べるか内心焦っているような渋谷。
こんな光景を見ていると、ああ、いつもの光景だなーって思える。
きみがいて、皆がいて、笑っていられる…。
この場所に無事に帰ってきたい…・。

「…新婚旅行ですか?」
「…っ!」
こっそりと囁きかけられた言葉に驚く。
「新婚旅行じゃないんですか、ユーリとの」
「えっ」
にこりと微笑む彼に慌てる。
こんなところで何て事を言ってるんだ彼は。
「な、なに言ってんのウェラー卿…っ」
小声でだけど、思わず声が上擦ってしまう。
そして確認し、僕達の会話は土産話の事を話している渋谷達には聴こえていない事にほっとする。

「…渋谷と僕は結婚もしてないってっ。ていうかあっちの日本じゃ男同士は結婚は出来ないよ!」
「…こちらでは、出来ますよ…?」
爽やかに言ってくる彼。
僕は、頭を抱え込みたいような心境になってくる。
まだ、僕達の関係はフォンビーレフェルト卿らには言っていない。
渋谷が明かす覚悟を決めるまで僕は待とうと思った。
…ウェラー卿にも言ってない筈だけど、何故か気づかれてたと知った時は驚いた。
でもまあウェラー卿だし…と一応納得はした。
納得はした…けどさぁ。偶に僕に渋谷との話を持ちだして突っついてくるのは止めてくれないかなぁ…。
他の事ならいざ知らず、渋谷との事なら無視も出来ないじゃないか…。
「ウェラー卿…きみってやっぱりいい性格してるよね…」
よりにもよって僕が無視は出来ないような渋谷の話題でだからたちが悪い。
「何のことでしょう?やはり互いに両想いなのですから、祝杯を上げて皆に祝福してもらった方がいいと思いますけどね」
微笑ましいような笑顔でさらっと言ってくる彼に、今度仕返しはしてやろうと心に決める。
それでもって、
「だからさ、こっちの世界とあっちの世界は違うし、それにこっちでも色々といきなりバラす訳にもいかない」
…僕、何ウェラー卿とこんな事話してるんだろう。渋谷との事を知られてウェラー卿とこんな所でこんな事を話すのって、何か妙に気恥かしい…。
「…今は、ですよね」
分かったような笑顔を向けてくるウェラー卿の、その崩れないスマイルが今はとても腹立たしい。
「では今回の旅行ではお2人でめいっぱい楽しんできてくださいね」
「そのつもりだよ」
渋谷と2人で初めての…僕はとても楽しみだしめいっぱい楽しみたいと思う。
「…あちらはここよりは安全だとは思いますが…しかし、何が起こるか分からなですいしくれぐれもご用心を」
「…うん。それは分かってる」
僕は神妙に頷く。
今回の旅で心に決めている事。
笑顔で旅を終わらせて帰ってきたい。そうなるためにも僕は…。

「コンラッドー…」
「!」
気づけばいつの間にか渋谷がこちらを見つめてきていた。
ちょっと機嫌が悪そうな渋谷は、ウェラー卿をじろりと睨んでいる。
「…ユーリ」
苦笑して僕から距離を取るウェラー卿。
「何話してたの?」
「大した事ではないですよ。旅行を楽しんできてくださいと言っていただけです」
「ふ〜ん…」
とどこか納得してないような渋谷。
そんな渋谷に、僕は自分の鼓動の音が速くなるのを感じた。
渋谷は実は結構…いやかなり嫉妬深いところがある。
僕もこういう関係になって実感した。 
きみは特に、そういう意味の特別な相手だと無意識に凄く独占欲を出してくる。
「渋谷、それでお土産の話はまとまったの?」
「ああ、それは一応なー」
渋谷が僕の隣に並ぶ。
僕の隣に立つ渋谷は、さり気なく僕とウェラー卿の間に立つような位置にいる。
それがどうしてなのかは分かっている。
そして分かった瞬間胸に…わきおこってくる気持ち…。
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