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「んっ、充電かんりょー!」
「…何だよそりゃ?」
「きみは充電器みたいだよねーって話」
「はあ?意味分かんないって」
渋谷の反応にくすりと笑みを漏らす。
「じゃ、入ろっか」
固まってしまっていた渋谷の手からキーを奪い取り、かちゃりと鍵を開ける。
「あ」
鍵はあっさりと開いた。
日本のと比べると開けづらいかもしれないけど、ここのカギはそんなに手間取るような鍵ではないらしい。
もっと複雑で難しい鍵とかもいっぱいあるしなー。
渋谷は鍵を開けるような機会がそうそうないから分かんないかもしれないけれど、そう言えば眞魔国でも古いままのところは開けるのが難しい鍵もあったりする。
「じゃあいざ行かん部屋の中へー!」
「それって逆じゃね?!意気込むなら部屋出てどっか行く時だろー?」
呆れたような顔をした渋谷にすかさず突っ込みを入れられる。
「まーまー細かい事はいーからいーから」
開いた扉に、渋谷の背中を押して押し込む。
「わわっ!ちょ、村田…っ」
入ってみた中はそれなりの普通の部屋。特別広い豪華な部屋でもないけれど、特別汚い訳でもない。
普通のシングル2つの部屋。
「治安の問題とかも色々あるし、宿泊所は安ければ安い程いいってもんじゃないもんねー。犯罪率がどうのこうのとか言われてたりもするけど、日本程治安のいい国も世界中で珍しい。だから安全性とかは日本みたいなのを期待したりはしないで、自分の身は自分で守るのを心がけた方がいい」
言いつつ僕は部屋の奥へ入ろうと足を踏み出すが…、腕を掴まれがくっと止まってしまう。
「わっ!」
「……」
「渋谷?」

渋谷からの反応がない。振り返り、渋谷の顔を覗き込む。
「…!!」
その瞳の色を見て驚いた。
「もう部屋についたんだよな」
確認される。
「うん」
「じゃあこれでもう…大丈夫だよな?」
再度確認される。後ろ手に扉を閉める渋谷。
「うん…?」
「お前、さー…」
少々据わった目でこちらを見つめる渋谷。その瞳に浮かぶ色合い、間近の眼差しにぞくりとした…。
「しぶ…や…」
「今日の色々、ちょっとヤバ過ぎ…」
もう部屋についたから大丈夫だ。
渋谷は自分の内に籠っていたものを解放していいか確認したんだ。
「う゛…」
渋谷の瞳に籠る熱…その熱さを直に向けられ心臓が早鐘を打つ。
…気づいていなかった訳じゃあない。
確かに僕は渋谷を挑発させてしまうような行動をしたかもしれない。
でも何かヤバいかなーやっぱとか思ってたけど、僕はここまで渋谷を挑発し過ぎてしまっただろーか。
そう思う程渋谷の眼差しに籠る熱は凄かった…。
でも渋谷とくっついていたかったんだ…。
もちろん人前であまりにもなのは控えていたつもりだったんだけど。しかし出来る限りは…。
「村田…」
「…っ」
頬に手を伸ばされびくっとなる。
まるで僕を食らいつかさんばかりの、渋谷から発せられる本気具合にくらくらと、立っていられなさそうになる…。
手を取られ、体をドアに押し付けられる。
「しぶ…んっ、んむぅっ!?」
どさっと荷物が手から滑り落ちたと同時に唇に感じる熱さ。
急に、強引に唇を奪われた…。
「んんっ!?ん…、ふっ」
渋谷の温もりに体の力が抜ける。
今日は初めて感じた渋谷の唇の熱さ…。
皮膚に触れているだけなのに、火傷しそうな程熱い…。
体も、そして僕の心の中も…。
「んぅっ、ん…んぁ」
僕の両腕を掴みドアに縫い留め、そして自らの片足も僕の足の間に入れ逃げられないようにしてくる渋谷。渋谷のそんな行動にも、僕はぞくぞくと歓喜の気持ちを溢れ出させてしてしまう…。
「ふぅ…、ん…んっ」
触れたい…触れて欲しい…。
唇を重ね合わせられたら、堰を切ったように気持ちが溢れ出してきてしまう。
…実は、僕もこうされるのを望んでいた…?
「は…っ、しぶ…やっ」
「村田、もっと…」
渋谷の言葉に、胸の内が震える。
…きみが僕を求めてくれている、きみの僕への想いを強く感じられる。
唇を触れ合わせるだけの行為なのに、きみとしていると思うとまったくの違うもののように感じる。
「僕も…」
甘い声が漏れ出てしまう。

嬉しい…。僕も、きみと触れ合えるのを望んでいたんだ…。
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