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そして…。そうこうしている内にあっという間に電車は駅についてしまう。
少々惜しいような気持ちを感じながら繋いでいた手を離す。
そして僕は渋谷と2人、宿泊先までの道のりを歩く…。


「あ、ほら渋谷っ」
くいくいと彼の服の袖を引っ張る。
「っ、何だよ村田」
「あそこっ、本屋があるよ。しかもあれは見るからに個人のところっぽいね!」
「個人の?」
「よくあるチェーンみたいなのじゃない個人運営の本屋だよ。個人のところ、特に中古のところとかって掘り出し物とかあったりするんだよねー」
「へー…」
渋谷が感心したような声を出してくる。
「行く?」
「ううん、今はいーよ」
荷物いっぱいだしと僕は荷物をぽんぽんと叩く。
「おれはそんな本屋ばっかなんて行かないから分かんないけどさー」
「きみは行ったとしてもある一部分だけとかだろう?」
野球関係のものが大半、そして他に行ったとしても漫画とか必要に差し迫られた勉強教材とかそういうものとかで、僕が見るような分野は見ないだろう。
「どうせおれは脳筋族ですよー」
「あははっ、拗ねない拗ねない。好みの分野じゃないんだし、それにきみは得意分野だと凄いじゃないか。集中力とか、それこそ野球関係の事とかだと凄いよねー」
そういうところは称賛に値する。
「村田…」
渋谷がぽんっと僕の肩を軽く叩く。
「やっぱお前は違うよなー」
しみじみと言われる。
「んん?」
「勝利とかだったらこういう時、これだから脳筋族はーって嫌み言ったあげくおれの気分低下させるような態度取ってくるんだもんなー!」
「ぷっ」
渋谷の言いように吹く。
「きみのお兄さんはねー。色々言ったりするけど、でも結局はきみの事が大切で心配してくれてる事とかも多いんだよ。所謂愛情表現だって」
フォローするが渋谷は露骨に顔を顰めてしまう。
「えー、もしそうならもっと分かりやすいのにしてくれよ。
いちいちムカつくしわっけわっかんねーよ!」
「渋谷…」
くすくすと笑みが漏れてしまう。

「あ、ほらっ、屋台も色々あるよ!」
渋谷の腕を掴み、そちらの方へ注意を促す。
「っあ、ほんとだ…何のやつだろ」
「色々あるよねー。ピクルスのお店とか、ワッフル、ポップコーン、あっちはリンゴ酒の屋台。あ、渋谷禁酒主義だっけ」
「そうだけど…、ってそれ以前にまだ二十歳になってねーよ。二十歳未満はお酒はいけませーん!」
「誕生日、もうすぐじゃないか?」
本当もうすぐで渋谷は二十歳になる。
「でもまだはまだ」
渋谷の答えはノーだ。まあ、そう言うと思ったけど…。
「きみはそういうとこ固いよねー」
一度こうと決めた事に対して他にも色々と…。
「嫌?」
「ううん。きみらしくていいと思う」
きみのそんなところも、僕はとても好ましく思ってるしね。
「…そっか」
嬉しげな顔をする渋谷。
「渋谷、こっちにいる間に二十歳になるんだよなー」
僕は先日、一足先に二十歳になったばかりだ。
「お袋に、何でこんな時期に丁度行くんだーって言われたもんな」
その時の事を思い出したのか渋谷は苦笑いする。
「美子さんは家族でちゃんとお祝いしたかったんだよ」
僕も居合わせていたから分かる。
誕生日その日に渋谷のお祝いが出来ない事を美子さんは残念がっていた。
しかし色々な都合を考慮したら、どうしても7月29日はドイツにいる日程中になってしまう。
「飛行機の便とか色々な都合で無理だったしなー」
「うん…。でもさ、お土産いっぱい買って帰ろう?帰ったら美子さん達、渋谷の二十歳のお祝いしてくれるだろうし。その時にドイツの土産話とかも聞かせてあげたらきっと盛り上がるぞー」
「そだな」
想像したのか、渋谷はふっと微笑みそう言ってきてくれた。
「あ、それとさ」
「ん?」
「渋谷家では帰ったらお祝いやるとして、こっちでも何かお祝いやりたいなーとか思ってたんだけど…乾杯もしない?お酒で」
渋谷の顔を覗き込む。
「むらっ」
「まるっきり1回も絶対嫌だって言う訳でもないんだろお酒飲むの?」
渋谷が禁酒って言っていたのは体を作る為っていうのもあるけど、まだ未成年だったっていうのも大きいだろう。
未成年の内のお酒を飲んだり煙草を吸ったりのあれこれは成長の大きな妨げになる。
「折角解禁の歳になるんだしそのお祝いって事で。いつも毎日飲むって訳じゃあないんだし。それに煙草と違って酒は薬にもなるんだし」
渋谷の服の袖部分を掴み、にぃっと笑みを形作る。
渋谷だって気になってはいた筈だ。別にそういうのを習慣にする訳じゃあない。
未成年じゃなくなって、それでもって本当に偶にというなら構わないのではないだろうか。
特別な祝い事として…。
それなら渋谷の中のルールを破った事にはならない筈だ。
案の定、渋谷はそれならと頷いてきてくれた。
「ま、まあちょっとぐらいなら…せっかく飲める歳になるんだし、祝いの為ーとかいうんだったら…」
ほんの少し目を逸らした渋谷は、興味はあるという顔はしていた。
しかしどこか不安そうに眉を寄せもする。
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