「坊っちゃん〜」 声をかけると、ふいに彼が言ってきた。 「だからさーもっと他の言い方ってないのかよ」 「言い方?」 ぶすっとしたような、そんな彼の顔をまじまじと眺める。 「…ヨザックの呼び方って坊っちゃんとか陛下とかそんな感じで、名前が一文字もかすってないじゃん」 少し早口気味に、焦るように言ってくる。 「名前とか、いや、せめて渾名とかでもさー」 …何となく分かった、分かってしまった。 これは、ユーリ陛下と呼んでいる時もどうのと言う問題ではないな。 しかしオレはあえて彼に真意を聞いてみる。 「どうしたんですかいきなり」 そうすると、予想だにしなかった答えが返された。 彼の目がふっと細められる。 「…羨ましいと思ったんだよ。コンラッドとの事」 「コンラッドー?」 よく知る幼馴染の名前が出た。 「こんな事ヨザックだから素直に言うんだけどさ…。コンラッドがお前をヨザって呼んでて、お前達名前で呼び合ってて、そんでもって他にはない雰囲気出しててさ…」 「そりゃ、長年の付き合いですからねー」 「コンラッド、グウェンやヴォルフとかとも違う親密さでさ…」 こんな状況でこういう事は言い慣れてないだろう彼が、それでも目を逸らさずにひとことひとこと真っ直ぐな言葉で言ってくる。 「そう言うのって、何か特別だなーって思ったんだよ…。お前達にはそりゃ、長年積み重ねたものがあるんだろうって分かってる。でもさ、だから…尚更おれの呼び方がそうってのはもっと虚しく思うんだよ」 「……」 さすがだ、やはり一筋縄ではいかない。 名前のみで呼んで欲しいのだろうと思っていたが、それだけではなくオレの予想の更に上をいった。 そんな事まで考えていたのだオレの愛しい彼は。 彼の真意を悟り、…嬉しくなる。 だからオレは…。 「はい、それがあなたのお言葉なら、陛下」 ぴしっと姿勢を正して言ってやれば案の定…。 「だから…っ」 声を荒げる彼。 はいはい、分かってますよー。 さっと素早く、オレはそんな彼の耳元に唇を寄せる。 そして…低い声で囁いてやる。 「ユーリ…」 「……なっっ!!?」 途端体が大きく跳ね、動揺の声を上げる彼。 「ほんとはもっと普段言ってもいいんですけどねー」 驚きのあまり声も出ない様子。 彼は口をぱくぱくとさせ、その頬は赤く染まっている。 不意打ちは成功したようだ。 「こういうのって、たま〜のふいのが効果的…でしょ?」 意地の悪い、面白そうな顔で笑ってやる。 ぱちんと片目を閉じるのおまけ付きで。 この後、彼はしてやられたままという訳ではなくて、やはりオレは彼の反撃をくらう事になるのだが…。 そんなこんなやり取も楽しい。 ユーリ陛下。 オレが仕えるに値すると思えた、そして愛おしい存在でもあるお方。 あなたと一緒なら、あなたと一緒だからこんなにも楽しんです。 ****************** 以前の絵のリニュ版。 いつもよりたまにのが効果的というのはあったりしますよね^^ ヨザックは凄くとてつもなくいい男だと思います…! 男前…v 幼馴染の仲の深さを理解しつつも拗ねる気持ちもある有利さん。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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