頬に触れる感触。 「…コンラート」 しーん…。 固まってしまった…。 俺もそうだが、扉の前にいる俺の兄であるグウェンも…。 この状況は、ヨザがふざけて頬に口付けしてきたところに、これまた運悪くグウェンが扉を開けてきて…。 そして丁度その瞬間を見られてしまったという訳だ…。 「グ、グウェン…」 俺が状況をどう説明しようかと言いあぐねいていると、 「コンラートお前…、やはりグリエと…」 よろっとよろめいてグウェンが後ずさりする。 「昔からそうではないかとも思っていたのだが、やはり…」 「ちょ、昔からって何だグウェン…!?」 昔…? 昔グウェンに何かそう思われるようなこと…。 !?もしかして、ツナちゃんの時の勘違いされたのを今だもって引きずられているのか!? しかしその頃のそれは完璧な、多大なる誤解だ。 「す、すまん…!」 しかしその言い訳を言おうとする前に、グウェンは脱兎のごとく部屋から去っていってしまった。 「グウェン…!!」 「あ〜、ありゃー無理だって、今頃アニシナちゃんのところにでもすっとんで行ったんじゃねーの?それか自室で精神統一の編みぐるみ?」 「ヨザっ、そもそもお前がこんなところで…っ」 怒りの表情を見せてもヨザは何処吹く風といったような様子で、笑いながら俺に言ってくる。 「まあまあ落ちつけって、これが…坊っちゃんやプー閣下とかじゃなくてよかったんじゃないのか?」 「当たり前だ!!ユーリやヴォルフにこんなところが見せられるか…!」 「こんなところって…」 ぽりぽりと頬を掻くヨザをぎっと睨みつける。 こんなところでしてくるなんて、例え頬とはいえ迂闊過ぎる。 ユーリとヴォルフ…、グウェンもそうだが特に二人には一番見られたくない…。 名付け親として、兄として、精神的に何か多大なるダメージを負ってしまいそうだ…。 「…親馬鹿で過ぎる兄弟愛の二重苦ねぇ…」 ぼそりとさりげに漏らされた声は、俺にはしっかり聞こえていた。 「ヨザっ、聞こえてるぞ!」 「おーこわっ、だってこんなところでならコンラッドの乙女みたいに可愛い姿が見られると思ったんですもの〜。こんなところで恥ずかしい〜…とか?」 グリエモードでくねくねとして言うヨザ。 「どこでもそんな風になんてなる訳ないだろ…」 その言いように頭痛すらしてきた…。 「嘘だって、まあお前がどこぞの乙女みたいに真っ赤になってもじもじなんてしたら、むしろ気色悪いっつーか」 「安心しろ、俺もなる気はない…」 自分でも低いと思う声が響く。 「うっそ、別に考えてねーっての!本気になるなよコンラッド〜」 さすがにマズイと思ったのか、ヨザが低姿勢になってくる。 だが、そう言いつつ肩に腕を回してくる。 まったくもって謝るような姿勢になってない。 だがまあ…、見られたことは予想外だったが、実のところそんなには俺も怒ってはいないが…。 ヨザはあえて頬に口付けをしてきた。 そしてこの場ではそれ以外のことは何もする気はなかったに違いない。 もし誰かに見られたとしても頬なら、ヨザの普段の態度もあり何とでも言い訳もしようと思えば出来る範囲だ。 ヨザはそういうところは意外ときっちりとしている奴だ。 「はあ…」 幼馴染の変わらぬ体温を感じながら、溜め息が漏れる。 季節が真夏だったら暑苦しいことこの上ないが…、少し肌寒くなってきた今のこの季節にヨザの高い体温は、思わず溜め息を漏らしたくなってしまう。 「一杯奢るからっ、なっ?」 そう言ってくる幼馴染に、また溜め息を吐く。 散々色々言っておきながら…。 「一杯じゃ駄目だ、今日は全部お前の奢りでいく」 俺はそう、ヨザに言ってやる。 「え〜っ、オレの今の財布の状態知ってるくせにそんなこと言うなよーっ!」 そんなヨザの顔を見ていると、僅かな笑みが滲んでしまう。 俺達には、変にべたべた甘ったるい空気を醸し出すより、こんな関係が合っているのかもしれない。 誰よりも近くに感じる距離。 どんな関係があるとしてもその前に、俺達は長年の腐れ縁の幼馴染なのだから…。 ***************** 前の絵のリニュ版。 グウェンに勘違いされたこともある二人w グウェンの解釈もなんとゆーか凄いところがありますが…^^; この二人はお互いがお互いのことを分かりあっていて、遠慮のない幼馴染ーといった感じのところが好きですv 絵の場所がどこかはご自由にご想像ください^^; <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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