父親は仕事ででかけている時間が長く、そのあいだ隣の家に子どもを預けていたのだけれど、深夜になっても帰ってこないのものだから、親切で面倒をみていた隣人もさすがにしびれを切らして、子どもをひとりの家に帰してしまうことも多かった。 子どもは寂しくて、父親が帰ってくるまで、親の名を呼んで泣いていたそうだ。 ある晩、子どもの泣き声がぴたっと止まり、笑い声が聞こえてきた。 隣人は、 「ああ父親が帰ってきたのだな」 と納得したのだけど、そのしばらくあとに父親の帰宅する音が聞こえてきて、 「父ちゃんおかえり」 と子どもが出迎えている。 そうした夜が何晩かつづいて、不審になった隣人はある晩、子どもの様子をみにいった。 子どもは、暗い部屋でひとりで喋っては笑っている。 その様子が、だれかと話しているもののようなので、翌日、父親にそのことを話した。 父親は、子どもに毎晩だれと話しているのか、とたずねた。 「母ちゃんだよ。おいらが寂しくて泣いてると、母ちゃんがきて、だっこしたり、頬ずりしたりしてくれるの」 「それで母ちゃんはどっから入ってくるんだ?」 子どもは、土間の縁側を指さした。 「あの下から、にこにこしながら這ってでてくるよ」 それから父親は仕事をかえて、早く帰宅するようになったそうだ。 w友達に教えるw [編集] 無料ホームページ作成は@peps! |